お見合いが終わったあと、
私は迷うことなく仮交際を希望しました。
「もう一度会ってみたい。」
素直にそう思ったからです。
数日後、
無事に仮交際が成立したという連絡を受けた時は、
本当に嬉しかったことを覚えています。
もちろん、まだ恋人ではありません。
これからお互いを知っていく段階です。
それでも、
「また会える」
という事実だけで、
婚活が少し前へ進んだような気がしました。
そして迎えた、初めてのデートの日。
私は少しだけ緊張しながら、
待ち合わせ場所へ向かいました。
「この人と歩く未来」を想像した
待ち合わせ場所に現れた彼を見て、
少し驚きました。
お見合いの日はスーツ姿で、
とても落ち着いた紳士という印象でした。
でも、この日の彼は違いました。
カジュアルなのに品があって、
若作りをしているわけでもない。
年齢に合った、大人のおしゃれを
自然に楽しんでいるような雰囲気でした。
その姿を見た瞬間、
「この人と一緒に歩く毎日は、
どんな感じなんだろう。」
そんなことを、ほんの一瞬ですが
想像している自分がいました。
婚活では、
条件や年齢を見て
判断することばかりでした。
でも、この日は違いました。
気づけば私は、
「条件」ではなく
「その人との時間」を
想像していたのです。
それは、婚活を始めてから初めての感覚でした。
海外から届く、小さな気遣い
お見合いから初デートまでの間、
彼は海外へ出張に行っていました。
それでも、
「今日はここに来ています。」
と現地の写真を送ってくれたり、
「○日に日本へ帰ります。」
と連絡をくれたり。
決して長文ではありませんでしたが、
こまめにLINEを送ってくれました。
私にとって海外で仕事をする世界は、
とても遠い存在です。
海外の街並みや仕事の話は新鮮で、
「こんな世界で働いている人がいるんだ。」
と純粋に刺激を受けました。
誠実さの向こうにあった、小さな違和感
初めてのデートでは、
鶏料理のお店を予約してくれていました。
しかも、私の好みに合わせて探してくれたそうです。
そういう気遣いが、とても嬉しかったのを覚えています。
食事では、海外出張の話をたくさん聞きました。
写真も見せてもらいながら、
「こんな国に行ったことがあるんですね。」
「海外に興味を持ったきっかけは何だったんですか?」
そんなふうに、
私は次々と質問をしました。
一方で、彼はどちらかというと口下手。
会話を盛り上げるタイプではありませんでした。
私が質問すると丁寧に答えてくれます。
私が自分の話をすると、
最後までしっかり聞いてくれます。
誠実な人だということは伝わってきました。
ただ、正直に言うと、
この日は少し気疲れもしました。
話題を考えるのは、ほとんど私。
沈黙になるたびに、
「次は何を話そう」と
頭の中でずっと考えていました。
もちろん、彼と一緒にいて
嫌な気持ちになったわけではありません。
でも、
「私が会話を引っ張っているな」
という感覚は、
デートの間ずっとありました。
まだ初めてのデートだからなのか。
それとも、
この先も私が会話を引っ張る関係になるのか。
この時は、まだ分かりませんでした。
でも、
その小さな違和感は、
帰り道になっても頭から離れませんでした。
その一言に、安心した
実は私は、お酒がまったく飲めません。
でも彼は、お酒が好きそうでした。
少し申し訳ない気持ちになって、
「私はお酒が飲めないんですが、
一緒に飲めなくても大丈夫ですか?」
と聞いてみました。
すると彼は笑顔で、
「全然問題ないですよ。
僕がお酒を飲むのを少し許してくれたら、
それで大丈夫です。」
そう答えてくれました。
その言葉を聞いて、私はとても安心しました。
「一緒に飲める人の方がいいな….」
そんな反応をされるかもしれないと、
少しだけ心配していたからです。
彼の返事は、とても自然でした。
相手を変えようとするのではなく、
「そのままで大丈夫ですよ。」
そう言ってくれているように感じました。
きっと、この人は優しい人なんだろう。
そう思えた瞬間でした。
期待と不安のあいだで
ただ、
その日のデートで
気になることもありました。
海外出張について聞くと、
「3か月に1回くらいは、
アメリカやヨーロッパへ行きます。」
「長い時は1か月くらい日本を離れます。」
と教えてくれました。
私は、
「すごい仕事だな。」
と素直に思いました。
でも同時に、
「そんなに家を空ける生活なんだ。」
という現実も見えてきました。
もし結婚したら。
夫が1か月家にいない生活。
何かあった時はどうするんだろう。
寂しくないかな。
そんなことを自然と考えていました。
でも一方で、
「お互いもう40代、50代の大人なんだから、
毎日一緒にいることだけが夫婦じゃないのかもしれない。」
そんな考えも浮かびました。
それぞれが自分の時間を大切にしながら、
必要な時には支え合う。
そんな距離感の夫婦も、
案外うまくいくのかもしれない。
一人でいる時間が長いからこそ、
一緒にいられる時間を大切にできるのかもしれない。
そんなふうに、一人で勝手に未来を行ったり来たりしていました。
私は40歳。
彼は51歳。
いわゆる晩婚になります。
だからこそ、一緒に過ごせる時間は決して長くありません。
仕事に打ち込む彼を尊敬する気持ちと、
「私はその生活を受け入れられるだろうか。」
という不安。
その二つの気持ちが、私の中で揺れていました。
答えはまだ出せなかった
約2時間の食事デートが終わりました。
お店を出ると、彼は自然に会計を済ませ、
「今日はとても楽しかったです。
またお会いしたいです。」
と笑顔で言ってくれました。
その言葉が、とても嬉しかったです。
私との時間を楽しんでくれたんだ。
そう思えて安心しました。
実はこの日、
私は少し体調が良くありませんでした。
それに加えて、
初めてのデートという緊張もありました。
会話が途切れないように。
相手が退屈しないように。
そんなことを考えながら
過ごしていたので、
デートが終わる頃には
少し疲れを感じていました。
彼は優しい人です。
嫌な思いをしたことも、
一度もありませんでした。
でも正直に言えば、
「この人とは、これからも
少し気を遣いながら付き合っていくのかな。」
そんな感覚もありました。
まだお互い遠慮があるからなのか。
それとも、もともとの相性なのか。
その時点では、まだ分かりませんでした。
だから、この日の私は、
「絶対にこの人だ!」
と思ったわけではありません。
でも、
「もう少し会ってみたい。」
「もう少し時間をかけて、この人を知りたい。」
そう思っていました。
婚活では、一度や二度会っただけでは
分からないことが本当にたくさんあります。
この日のデートは、
「彼を好きになった日」ではありません。
「もう少し知ってから答えを出したい。」
そう思えた一日でした。
「条件」ではなく、「この人」を知りたい
この日のデートで、
「この人と結婚したい」
そう思えたわけではありません。
でも、不思議と私は、
この人との未来を何度も想像していました。
海外出張が多い生活。
夫婦で過ごす時間。
お互いが離れて過ごす日常。
頭の中で、いろいろな未来を思い描いていました。
もちろん、その未来はまだぼんやりとしたものです。
楽しそうな結婚生活を思い描けたわけではありません。
むしろ、
「私はその生活を受け入れられるんだろうか。」
そんな不安の方が大きかったように思います。
でも、それでも未来を想像している自分がいました。
以前の私なら、
年齢や条件だけで答えを出して、
そこから先を考えることすらありませんでした。
でも、この日は違いました。
「この人となら、どんな毎日になるんだろう。」
そんなことを、自然と考えている自分がいました。
そのことに気づいた時、
「私、少し変われたのかもしれない。」
そう思えたんです。
相手を条件ではなく、
一人の人として知ろうとしている。
自分から歩み寄ろうとしている。
婚活がうまくいっているわけではありません。
不安も迷いも、まだたくさんありました。
それでも、
以前の私にはなかった変化が、
確かにそこにはありました。
実は、彼のプロフィールには、
「子どもを希望する」
と書かれていたんです。
私は子どもを持たない人生を希望しているので、
本来なら、その時点で
ご縁はないと判断していたと思います。
それでも私は、
「条件だけで何もかも判断するのは、
もうやめよう。」
そう決めて、お見合いを受けました。
会ってみれば、
プロフィールだけでは分からないこともあるかもしれない。
お互いの子供に対する考えを、
きちんと話せるかもしれない。
だからまずは、
会ってみる事。
その人自身を知ること。
それを優先することにしたんです。
子どものことは、
結婚を考えるうえで、
どうしても避けては通れない話です。
本当は、
できるだけ早い段階で
確認しておきたいと思っていました。
でも、
初めてのデートで切り出すには、
あまりにも重い話題です。
楽しく過ごしている時間の中で、
その話を持ち出す勇気がありませんでした。
「もう少しお互いを知ってから話そう。」
そう思って、
その日は何も聞けませんでした。
正直に言えば、心残りでした。
一番大切なことを、
聞けないまま帰ることになったからです。
不安は残ったままでした。
それでも私は、
「もう少し、この人のことを知ってみたい。」
そう思いました。
婚活では、
一度会っただけでは分からないことが、
本当にたくさんあります。
だから私は、
もう一度この人と向き合ってみることにしました。
次に会う時こそ、
子どものことをきちんと話そう。
そう心に決めながら、
私は二度目のデートの日を迎えることになります。



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