気づけば、昨日とは違う私がいた
食事を終えたあと、
私たちは海辺を少し散歩することにしました。
空は雲ひとつない青空。
海面は太陽の光を受けてキラキラと輝き、
遠くには明石海峡大橋がきれいに見えていました。
「今日は本当にいい天気ですね。」
そんな何気ない会話をしながら歩くだけで、
不思議と心まで軽くなっていくようでした。
釣りをしている人を見つけて、
「何が釣れるんでしょうね。」
と話していると、
一隻の船がゆっくり通り過ぎていきました。
夫はそれをみて、
「僕、いつか船の免許を取ってみたいんですよね。」
と言いました。
普段はあまり自分のことを多く話さない人だったので、
その言葉は少し意外でした。
私は思わず、
「免許が取れたら、私も乗せてくださいね。」
と冗談を返していました。
初めて会った頃なら、
そんなことは言えなかったと思います。
気づけば私は、
夫の隣にいることを
当たり前のように感じていました。
派手な楽しさではありません。
ただ、”普通”に過ごせることが、
こんなにも心地いい。
自然体でいられる時間は、
思っていた以上に幸せでした。
心は、確かに昨日より近づいている….
でも――
恋愛感情だけが、
どうしても追いついてきませんでした。
何も話さない時間が好きだった
再び車に乗り込み、
海沿いをドライブしました。
窓の外には穏やかな海。
私たちは、ずっと話し続けていたわけではありません。
でも、それは気まずい沈黙ではありませんでした。
景色を眺めながら、
ただ同じ時間を過ごしている。
それだけで十分だったんです。
私は今までの恋愛で、
沈黙になると、
「何か話さなきゃ。」
そう焦ってしまうことが何度もありました。
でも、この人とは違いました。
話さなくても落ち着く。
無理に盛り上げなくても居心地がいい。
もう何年も一緒にいる夫婦のような、
そんな安心感がありました。
年齢差は壁じゃなかった
車の中では、
いろいろな話をしました。
見ていたテレビ番組。
流行っていた音楽。
子どもの頃の思い出。
10歳も年齢が離れている私たちは、
お互いに知らないことがたくさんありました。
でも、その違いが楽しかったんです。
「そんな時代だったんですね。」
と私が笑うと、
今度は夫が、
「それは知らなかったです。」
と私の話を楽しそうに聞いてくれる。
婚活を始める前は、
年齢差は”不安”でした。
でもこの日、
年齢差は”楽しさ”に変わっていました。
「また会いたい」が嬉しかった
私たちは海沿いのカフェに立ち寄りました。
気づけば一時間以上。
時間を忘れて話していました。
恋愛ドラマのようなドキドキはありません。
手をつなぎたいとも思いません。
でも、
時間が過ぎるのが惜しい。
そう思えた相手は、
婚活をし始めてから、
夫が初めてでした。
きれいな夕日が見えた頃、
夫が言いました。
「そろそろ帰りましょうか。」
帰り道、
「淡路島なら近いですし、
また違う季節にも来たいですね。」
そう何気なく話してくれました。
私が
「また会いたい」と思っていたように、
夫も、
次の約束を自然に考えてくれていた。
そのことが、
思っていた以上に嬉しかった。
渋滞で気づいた本当の優しさ
帰り道。
最後にサービスエリアへ立ち寄り、
高速道路へ戻ると、大渋滞でした。
車はほとんど動きません。
普通なら疲れてしまう場面です。
それでも夫は、
「眠くないですか?」
「お腹空いていませんか?」
何度も私を気遣ってくれました。
さらに、
「こういう時はテレビを見ているのが一番ですよ。」
そう言ってナビにテレビを映してくれました。
テレビでは全国の人気グルメランキングが流れていて、
「これ美味しそうですね。」
「今度食べに行きたいですね。」
そんな何気ない会話をしながら、
渋滞の時間さえ楽しく過ごしていました。
この人は、
こんな状況でもイライラしない。
相手を思いやる気持ちを忘れない。
私はその穏やかさに、少し惹かれていました。
優しさは、
特別な言葉ではなく、
こういう何気ない時間に表れるものなんだと知りました。
私の結婚観が少し変わった日
気づけば私は、
夫の外見のことを考えなくなっていました。
朝はあれほど気になっていたのに…
長時間一緒にいても、
一度も
「疲れた。」
「早く帰りたい。」
そう思わなかったんです。
派手な出来事はありません。
特別なサプライズもありません。
胸が高鳴る恋でもありません。
でも、
一日中、
心だけはずっと穏やかでした。
無理をしない。
気を遣いすぎない。
ありのままでいられる。
そんなデートは、久しぶりでした。
恋人。
ではありませんでした。
胸が苦しくなる恋でもありません。
会えない日が寂しくなる恋でもありません。
でも、
隣にいることが自然でした。
恋人というより、
家族。
その感覚の方が、ずっと近かったんです。
そして、
その日初めて思いました。
「結婚相手って、こういう人なのかもしれない。」
その日、私はまだ恋愛感情を持てたわけではありません。
それでも、
「また会いたい」
そう思っている自分がいました。
好きになった。
そんな実感は、まだありません。
でも――
好きになったというより、
居心地の良さが少しずつ積み重なっていた。
その積み重ねが、
気づかないうちに私の心を、
少しずつ夫の方へ向かわせていたのかもしれません。
恋愛と結婚は、
同じではないのかもしれない。
好きになる順番も、
人それぞれなのかもしれない。
あの日の淡路島で、
私の結婚観は、
少しだけ変わり始めていました。
でも、
私の中には、
どうしても聞いておきたいことが、
一つだけ残っていました。
もし結婚を考えるなら、
避けては通れない話です。
「子どものこと、どう考えていますか?」
勇気を出して聞いた、その答えは──。
続きは次回、お話ししたいと思います。
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