もう聞くしかなかった
淡路島からの帰り道。
高速道路は、大渋滞でした。
車はほとんど動きません。
本来なら退屈な時間だったと思います。
でも夫のおかげで、
その時間さえ穏やかで、楽しい時間になっていました。
だからこそ私は、
ずっと胸の中にしまっていた話を切り出そうとしていました。
それは、
「子どものことを、どう考えていますか?」
という質問でした。
避けては通れないこと
二回目のデートで、
子どもの話をする。
普通の恋愛なら、
きっと早すぎる話です。
相手に重いと思われるかもしれない。
引かれてしまうかもしれない。
そんな不安から、
もう少し仲良くなってから話そう、と思ったかもしれません。
でも、私たちは結婚相談所で出会いました。
「好き」になることも大切。
でもそれ以上に、
結婚生活を一緒に歩める相手なのか、を確認することも大切です。
だから私は、
この話だけは避けて通れないと思っていました。
タイミングを探し続けた
実は私は、
デート中ずっと話を切り出すタイミングを探していました。
海を見ている時も。
カフェで話している時も。
帰りの車の中でも。
「今かな。」
「やっぱり違う。」
そんなことを何度も繰り返していました。
聞かなきゃいけない。
頭では分かっていました。
でも、どうしても勇気が出ませんでした。
答えを聞くのが怖かった
私は、結婚するなら
”子どもを持たない人生”を望んでいました。
この考えは、婚活を始める前から変わりません。
だからこそ、相手が
「子どもは欲しい。」
そう考えているなら、
その時点で結婚は難しくなります。
どちらが正しい、間違っているという話ではありません。
子どもを望む人にも、
子どもを望まない人にも、
それぞれの人生があります。
だから私は、
このことだけは早いうちに確認したいと思っていました。
もし価値観が違うまま交際を続ければ、
お互いに期待を抱かせてしまうかもしれません。
それはきっと、
お互いにとって幸せなことではありません。
でも――
もし夫が、
「子どもは欲しいです。」
そう答えたら…
その瞬間、この人との未来は終わります。
どれだけ一緒にいて楽しくても。
どれだけ居心地が良くても。
そこだけは、譲ることのできない価値観でした。
だから私は、
返事を聞くのが怖かったんです。
先延ばしにすれば、
また次のデートはできるかもしれない。
でも、その時間はお互いにとって無駄になってしまいます。
だから私は、
勇気を出すしかありませんでした。
初めて気づいた本当の気持ち
その時になって、
私はようやく自分の気持ちに気づきました。
返事が怖い…
それは、
相手に嫌われることが怖いからではありませんでした。
この人との未来が、
ここで終わってしまうかもしれない。
それが怖かったんです。
もし何とも思っていない相手なら、
「合わなかったら仕方ない。」
そう割り切れたと思います。
でも違いました。
この人とは、
もう少し一緒にいたい。
もっとこの人を知りたい。
この穏やかな時間が、
まだ終わってほしくなかったんです。
恋愛感情とは少し違う…
でも、
この人との未来を失いたくない。
そんな気持ちが、
確かに私の中にありました。
恋ではない想い
私はずっと、
「恋愛感情がない。」
そう悩んでいました。
ドキドキしない。
会えない日が寂しいわけでもない。
それなのに、
未来を想像すると、
隣にはこの人がいました。
今思えば、
好きになったというより、
居心地の良さが少しずつ積み重なっていました。
何気ない会話。
一緒に見た景色。
沈黙さえ苦しくない時間。
その一つひとつが、
少しずつ私の心を動かしていたんです。
気づけば私は、
「この人との未来を失いたくない。」
そう願うようになっていました。
あの一言を伝えた
車の中では、
いつも通り他愛もない話をしていました。
でも私の頭の中は、
「いつ聞こう。」
そのことでいっぱいでした。
話が途切れるたびに、
今かな。
やっぱり違う。
もう少し後にしよう。
そんなことを何度も繰り返していました。
そして、
少しの沈黙が流れた時。
私は、小さく息を吸って、勇気を出して聞きました。
「子どものことって、どう考えていますか?」
夫は少し驚いたような表情で、私の方を見ました。
数秒の沈黙が流れます。
私には、その数秒が何分にも感じられました。
そして夫は、
ゆっくりと口を開きました──。



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